大阪地方裁判所 平成3年(わ)1549号 判決 1990年10月25日
本店所在地
大阪府東大阪市高井田西二丁目一番一八号
日之出金属熱錬株式会社
右代表者代表取締役
谷口弘
本籍
大阪府東大阪市河内町三三四番地の一
住居
同東大阪市河内町五番一二号
会社役員
谷口弘
大正三年七月一四日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官梶山雅信出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人日之出金属熱錬株式会社を罰金五七〇〇万円に、被告人谷口弘を懲役一年一〇月に処する。
被告人谷口弘に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人日之出金属熱錬株式会社(以下、「被告会社」という。)は、大阪府東大阪市高井田西二丁目一番一八号に本店を置き、金属熱処理加工業を営むもの、被告人谷口弘は、被告会社の代表取締役としてその職務全般を統括しているものであるが、被告人谷口弘は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、架空の経費及び仕入れを計上するなどの方法により所得の一部を秘匿したうえ、
第一 昭和五七年一一月一日から昭和五八年一〇月三一日までの事業年度における実際所得金額が一億一四一一万五八三五円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一二月二六日、大阪府東大阪市永和二丁目三番八号所在の所轄東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一二〇八万三一九一円で、これに対する法人税額が二一四万四八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四四九九万八三〇〇円と右申告税額との差額四二八五万三五〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた、
第二 昭和五八年一一月一日から昭和五九年一〇月三一日までの事業年度における実際所得金額が二億四三六四万四〇八円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一二月二四日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二六五八万五七三六円で、これに対する法人税額が六七二万三二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億七〇万八〇〇〇円と右申告税額との差額九三九八万四八〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた、
第三 昭和五九年一一月一日から昭和六〇年一〇月三一日までの事業年度における実際所得金額が二億九一四八万四九二九円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一二月二八日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二一六二万六五八五円で、これに対する法人税額が三五六万六二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億二〇四一万七〇〇円と右申告税額との差額一億一六八四万八五〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた
ものである。
(証拠の標目)
(注) 括弧内の算用数字は証拠等関係カードの検察官請求分の請求番号を示す。
判示事実全部について
一 被告人谷口弘の当公判廷における供述
一 被告人谷口弘の検察官に対する供述調書三通へ197ないし199)
一 被告人谷口弘に対する収税官吏の質問てつ末書四九通(148ないし196)
一 第三回公判調査中の証人天野雅真の供述部分
一 加藤満(81)、高岡彰(97)、平邦二郎(99)、近藤進一郎(234)の検察官に対する各供述調書
一 高田晴子(二通、74、75)、高野賢次郎(78)、加藤満(二通、79、80)、遠藤篤彦(三通、84ないし86)、戸内衷(93)、高岡彰(二通、95、96)、平邦二郎(98)、北川秀雄(102)、本田拓(107)、森本忠温(二通、110、111)、勝見英夫(二通、116、117)、武岡孝行(121)、長谷川寛和(123)、岡本幸男(126)、山本弘治(128)、谷口昌(三通、132ないし134)、谷口えり子(二通、136、137)、谷口榮子(四通139ないし142)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 岸本滋子(143)、清水正一(144)作成の各供述書
一 千羽利彦(213)、中島正夫(214)、今井康雄(220)、上辻建次(230)、井上豊(231)、西川秀一(232)、坂口浩一郎(233)作成の各確認書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(10、14、17、21、33、36ないし38、42、43、62、64、68、70、71、73、233ないし225)
一 収税官吏作成の写真撮影てん末書(226)
一 東大阪税務署長作成の証明書(8)
一 被告会社作成の証明書(7)
一 大阪法務局東大阪支局登記官作成の法人登記簿謄本(146)
一 押収してある総勘定元帳五冊(平成元年押第五〇三号の一ないし五)、手形受払帳六冊(同号の六ないし一一)、経費明細帳五冊(同号の一二ないし一六)、仕入帳五冊(同号の一七ないし二一)、固定資産台帳一綴(同号の二二)、償却資産種類別明細書一綴(同号の二三)、償却資産申告書と表記の綴一つ(同号の二四)、各炉変成炉各機械修理記録一綴(同号の二五)
判示第一、第二の各事実について
一 遠藤篤彦の検察官に対する供述調書(87)
一 藤田昌一(76)、和田智山(124)、谷口孜郎(135)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の査察官調査書(54)
判示第一、第三の各事実について
一 中島正夫に対する収税官吏の質問てん末書(106)
一 収税官吏作成の各査察官調査書(13、16、23、29)
判示第一の事実について
一 東浦善一(103)、池永勝(109)、松永貢(二通、114、115)、武岡孝行(118)、蒲田直人(120)、林庄太郎(122)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(11、15、22、24、26、30、31、40、53、57、58、61、67)
一 東大阪税務署長作成の法人税確定申告書謄本(4)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(1)
判示第二、第三の各事実について
一 北川秀雄の検察官に対する供述調書(102)
一 竹瀬正躬(94)、平井克(二通、100、101)、中島利行(104)、木下昭人(130)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(35、46、56、65、72)
判示第二の事実について
一 藤田巖(105)、中谷明(二通、112、113)、山岡章二(119)、豊田三代次(125)、檀上正幸(127)、織田泰三(129)、谷口えり子(138)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(20、27、28、32、34、41、50、52、55、63、69)
一 東大阪税務署長作成の法人税確定申告書謄本(5)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(2)
判示第三の事実について
一 第四回公判調書中の証人羽田隆二、同森光興の各供述部分
一 鈴木新(83)、天野雅真(89)の検察官に対する各供述調書
一 北野博也(77)、鈴木新(82)、羽田隆二(90)、森光興(二通、91、92)、高谷平男(131)の収税官吏に対する各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(12、19、25、47、59、60、66)
一 東大阪税務署長作成の法人税確定申告書謄本(6)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(3)
(法令の適用)
被告人谷口弘の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人谷口弘を懲役一年一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
更に、被告人谷口弘の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金五七〇〇万円に処することとする。
なお、訴訟費用については、刑訴法一八一条一項本文により、その二分の一ずつを各被告人に負担させることとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 仙波厚)